2023.03.30
Thursday
麦粒腫(ものもらい)の原因
【医師監修】麦粒腫(ものもらい)の原因|症状や他の病気との違いも解説
ものもらい(麦粒腫)はまぶたや眼の周辺に腫れが起こる病気です。この記事では「ものもらい」の腫れ以外の症状や、霰粒腫や結膜炎など似た病気との違い、症状が出る原因などを説明しています。症状を確かめたい方や、ものもらいの原因を突き止めたい方におすすめです。
まぶたや眼の周辺で腫れが起こる「ものもらい」ですが、他にはどのような症状があるのでしょうか。また、どういったことが原因で起こるのでしょうか。
この記事では、「ものもらい」の症状や結膜炎など他の症状との違いや、「ものもらい」が発症 する原因について詳しく解説していきます。
目次
麦粒腫(ものもらい)とはどんな病気?
ものもらいは、細菌の感染によってまぶたの付け根やまつげの毛穴部分に炎症が生じ、腫れ上がった状態を指します。
正式名称は「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」ですが、「ものもらい」をはじめ、地域によって「めばちこ」「めいぼ」「めぼ」「おひめさん」など、さまざまな呼び方があります。
一般的には短期間で自然に治癒する場合が多いですが、治癒までには数日から1週間程度の期間を要することがあります。
麦粒腫(ものもらい)の症状
麦粒腫(ものもらい)では症状の進行に従って次のような症状が現れます。
瞼の赤み・腫れ・痛み
麦粒腫の初期症状としては、瞼の赤みが現れ、軽度のかゆみを感じたり、痛みを感じたりします。手で触れた時や、まばたきをした時に痛みを感じて気づくことも多くあります。
初期段階を過ぎると、瞼に小さな腫れが出てきます。腫れは比較的小さい場合が多く、特に外部から見て分かるほど腫れることは少ないですが、まぶたの内部で腫れが生じてしまう場合が多くあり、それによって痛みを感じることもあります。
目やに・充血・異物感など
麦粒腫の症状には、目やに、涙、まぶたの充血や異物感などもあげられます。これらの症状は、麦粒腫の炎症によってまぶたが刺激されることによって生じます。異物感はまぶたが腫れ上がることによって眼球に接触するために生じるとされています。
光をいつもより眩しく感じる、涙目になるなどの症状を感じることもあります。
炎症部分の化膿
症状が進行すると、腫れた部分の化膿が起きることがあります。炎症が悪化すると、まぶたの内側にある脂肪や汚れが細菌感染を起こし、膿がたまります。膿がたまると痛みや腫れが強くなり、麦粒腫が成長する原因となります。
ただし、ものもらいは数日で回復することが多く、炎症や痛みが長く続くことはありません。
化膿する前に点眼薬や眼軟膏で治療をすることで、化膿の前に回復するといったケースもあります。
膿の排出
麦粒腫が炎症を起こして膿がたまると、しばしば膿が自然に排出されます。膿が排出されると、まぶたの腫れや痛みが緩和されることがあります。しかし、自然に排出されない場合は、医師による切開排膿が必要となることもあります。
自身で針を使って膿の排出を行うことは危険であるだけでなく、別の感染症にかかってしまうリスクもあるため、必ず眼科を受診して、医師による治療を受けましょう。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)との違い
麦粒腫と似たような症状を引き起こす目の病気として霰粒腫(さんりゅうしゅ)が挙げられます。
霰粒腫も、瞼の腫れや痛み、眼球の圧迫による目のかすみなどの症状が出ますが、細菌が原因である麦粒腫とは異なり、霰粒腫は細菌とは無関係に症状が現れます。
霰粒腫は、瞼の縁にある分泌腺であるマイボーム腺が脂肪などで詰まることで分泌物が溜まり、肉芽腫と呼ばれるしこりや腫れが生じます。マイボーム腺は油分を分泌して眼の乾燥を防ぐ役割も担っているため、詰まることでドライアイなど目の乾燥の症状も現れることがあります。
結膜炎との違い
結膜炎は、白目の表面部分を覆う結膜の炎症であり、目の充血、目やに、涙目、かゆみ、痛み、光に対する過敏症などの症状が出ます。
まぶたの毛包や汗腺の炎症によって引き起こされる麦粒腫と異なり、目の表面で起こる症状が大半です。
また、結膜炎はウイルスや細菌によって引き起こされ、人を通じて感染することもあり、抗生物質や抗ウイルス薬、抗アレルギー薬などを用いた治療が行われることが多いです。
麦粒腫(ものもらい)は人に移る?
麦粒腫は、ウイルスが原因のものではなく、目のまわりの不衛生によって起こるため基本的には人から人への感染はありません。
人に移るとされているのは、「はやり目」などのウイルス性の目の病気になります。
麦粒腫(ものもらい)の原因
麦粒腫の原因としては、細菌の感染が挙げられますが、ブドウ球菌の感染によるものと、他の疾患が原因で発症するものに大きく分けられます。それぞれ、どのような要因があるのかを解説していきます。
ブドウ球菌の感染による麦粒腫
麦粒腫の原因のひとつは、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などと呼ばれるブドウ球菌の感染です。
ブドウ球菌は喉・鼻・皮膚・毛髪・腸管など人間の体に存在する常在菌であり、通常は感染することはありませんが、免疫力の低下やブドウ球菌が毛包や汗腺に入り込むことが原因で感染してしまうことがあります。
このブドウ球菌の感染は以下のさまざまな要因によって起こります。
コンタクトレンズ
コンタクトレンズを装用していると、装用時や外す時などに目の周りを触る機会が多くなることに加え、長時間使用により、まぶた周辺の汚れがたまりやすくなったりするため、細菌を持ち込みやすくなります。
また、コンタクトレンズの装用中に目に異物が入り込んでしまうこともあり、このような原因でブドウ球菌が繁殖すると、麦粒腫を引き起こすことにつながります。
前髪による刺激
前髪がまぶたに触れることで、まぶたの皮膚が傷ついたり、刺激されたりすることがあります。カットしたての髪の毛は先端が尖り、触れた時の刺激も強くなります。前髪が目にかかる長さの方は注意が必要です。
アレルギーによる炎症
花粉やハウスダストなど、アレルゲンに過剰に反応することによってまぶた周辺に炎症が起きていると、細菌感染のリスクが高くなります。
アレルギーによる目がかゆみで目をこする機会が多くなることも、細菌侵入の機会が増えるために麦粒腫の発症を招く原因となります。
プールなどの雑菌
麦粒腫はプールなどで人から人へ移る病気ではありません。しかし、プールでの水泳や入浴後に、水中の雑菌が原因で麦粒腫を生じることがあります。
水質が悪い場合や、プールでの水泳や入浴後に清潔なタオルで拭かなかった場合に麦粒腫を発症することがあります。
高温多湿
高温多湿な環境では細菌は増殖しやすくなります。また、汗や皮脂が過剰に分泌され細菌の増殖が起こりやすくなり、暑さによって夏バテや睡眠不足になり免疫力や抵抗力が低下することも原因の一つとして考えられます。
他の疾患によって生じる麦粒腫
他の疾患が原因で麦粒腫が生じることがあります。
例えば、アクネ菌感染症、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患がある場合、まぶた周辺に炎症が生じやすくなり、麦粒腫が発生することがあります。
また、糖尿病や免疫不全症などの全身疾患がある場合も、免疫機能の低下によって細菌感染しやすくなり、麦粒腫の発生リスクが高くなることが知られています。
ものもらいを繰り返しているようであれば、このような他の疾患が原因となっている可能性もあるため、医師の診断を受けることをおすすめします。
症状が気になる場合は眼科の受診を 検討しよう
麦粒腫は一般的に自然治癒する場合が多いですが、症状が重い場合や反復して発症する場合もあります。早めに眼科を 受診することをおすすめします。
麦粒腫(ものもらい)の治療方法については、下記記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。
【監修者情報】
- ⽒名:
- 添田 尚一
- 所属:
- てのひら眼科 院長
- 専⾨:
- 緑内障、一般眼科
USMLE(米国医師国家資格)取得。日本眼科学会認定眼科専門医。
虎の門病院、井上眼科病院、聖路加国際病院眼科にて勤務。
2023年7月、てのひら眼科を開設し、院長として診療を行う。
日本眼科学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、日本緑内障学会、日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本網膜硝子体学会に所属。