2024.08.02
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AI技術で野球肘を高精度に診断—京都府立医大と兵庫県立大が新システム開発
最大97%の精度で野球肘初期段階を検出—診断機器の実用化を目指す
野球による投球動作を繰り返すことで発症する「野球肘」を、高精度で検出する人工知能(AI)を用いた新たな画像診断プログラムを、京都府立医科大学と兵庫県立大学の研究チームが開発しました。このシステムは、最大97%の精度で野球肘の病変検出が可能であり、将来的には人工知能による自動検出が可能になることを目指しています。この研究成果は、5月にアメリカの整形外科専門誌に発表されました。
野球肘は「離断性骨軟骨炎」と呼ばれる症状の一種で、過度な投げ込みによって肘関節内の軟骨が剥がれ、可動域の制限や痛みを引き起こします。初期段階では症状がほとんど現れないため、発見が遅れることが多く、手術が必要になるケースも少なくありません。
調査によると、野球をする中高生の約1.6〜3.4%がこの症状に悩まされていると言われています。しかし、野球肘の早期発見には超音波検査が適していますが、その頻度は年に1~2回程度であり、診断できる専門医も限られています。
今回の研究で開発されたAIプログラムは、超音波検査の画像から肘関節の表面を自動的に検出し、野球肘の診断を行います。専門医が保持する大量の画像データを用いて学習させた結果、最大97%の精度での検出が可能となりました。
京都府立医科大学大学院の木田圭重助教(整形外科学)らの研究チームは、「新しく開発されたシステムが臨床現場に導入されれば,野球肘検診の効率を大幅に向上させることが期待でき、これによって検診に要する時間を短縮し,必要な人的資源も削減できる可能性がある。さらには、野球肘検診だけでなく,クリニックや一般外来診療においても離断性骨軟骨炎の検出機会が増え,結果として離断性骨軟骨炎の早期発見率の向上が期待される」と述べています。
参考元: https://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2024/files/36023.pdf